ディープインパクトラストランとなった有馬記念。
当然の様にファン投票でも1位の支持を受けた。
入場制限が掛かるという噂も出回った。
そのためか、入場人員は117,251人と前年を大幅に下回った。
単勝オッズは1.2倍。70%を越える単勝支持率は史上第2位だった。
━◇◆◇━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━◇◆◇━
ジャパンカップに続き、メンバーは揃っていた。
毎日王冠、天皇賞(秋)、マイルCSと3連勝中のダイワメジャー。
オーストラリアのGTでハナ差の1、2着だったデルタブルース、ポップロック。
宝塚記念馬である女傑スイープトウショウ。
ジャパンカップ2着のドリームパスポート。
二冠馬メイショウサムソン。
グランプリに相応しい面々だ。
当日の6レースでは、ディープインパクトの弟であるニュービギニングが強烈な追い込みで勝利し、スタンドを多いに盛り上げた。
ディープインパクトのラストランまで、2時間を切った。
━◇◆◇━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━◇◆◇━
パドック、本場場入場、ゲート前、いずれもディープインパクトは落ち着いていた。
ここに来てようやく、馬が完成されたかの様だった。
ゲートインの際にスイープトウショウが暴れるのにも動じず、ゆっくりとゲートに入っていった。
静かに、静かにゲートが開くのを待っていた。
━◇◆◇━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━◇◆◇━
ゲートが開き、ゆっくりとしたスタートを切ったディープインパクトは、最高後から数えて3番手にポジションを取る。
ダービーで2着に逃げ粘ったアドマイヤメインが早いペースで逃げる。
ダイワメジャーが2番手、ポップロック、メイショウサムソンと続く。
ドリームパスポートは7番手辺りにつけ、スイープトウショウはディープインパクトをマークするようにしてレースは進む。
3コーナーから抜群の手応えで進出したディープインパクトに、スイープトウショウは付いていけない。
そして4コーナー。
武豊の手が動く。
ディープインパクトは馬群の一番外を回っているにも関わらず、他馬が止まって見える。
直線に向き、一気に先頭に立つ。
他の有力馬は置き去りにされ、勝利を確信した武豊が手綱を抑えると、ようやく少しだけ差を詰めた。
━◇◆◇━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━◇◆◇━
今までも散々インパクトのあるレースを見せられた。
しかし、これまでのどのレースよりも強烈な速さだった。
全てが完璧だった。
引退してしまうのが本当に惜しまれると、誰しもが思った。
━◇◆◇━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━◇◆◇━
鳴り止まない拍手。
ディープコール。
5万人がディープインパクトの引退式を見守った。
ありがとう。
でも、お前にはもっともっと夢を見た。
子供に託すにはまだ早すぎる。
お前が、本当に世界一になるのを見たいんだ。
もう叶わないけれど。
できることならもう一度、あの舞台で1着で駆け抜けるお前を…
これからどんな馬が現れようと。
ディープ。
お前が最強馬だ。
━◇◆◇━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━◇◆◇━
武豊はレース後こう言った。
「今でもディープが世界で一番強いと思っています。」