ディープインパクトの2戦目には、年明けの若駒ステークスが選ばれた。
前年には兄のブラックタイドが、同じく鞍上武豊を背にこのレースを制していた。
メンバーには、インプレッションやアドマイヤコングといった、
ディープインパクトと同じく、サンデーサイレンス産駒の良血馬がいた。
しかし、単勝オッズはまたしても1.1倍。ほぼ動かない。
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新馬を圧勝した馬の2戦目。
期待とは裏腹に、凡走した馬は枚挙に暇が無い。
「競馬場には、希望を遥かに上回る失望が溢れている」
河内元騎手の言葉だ。
思えば、兄のブラックタイドも新馬戦を快勝した。
2戦目は単勝1.4倍で4着。
新馬戦を8馬身差で圧勝し、ディープインパクトの再来と騒がれたオーシャンエイプスもそうだった。
2戦目は単勝1.3倍で4着。
本物なのか。
それとも、よくいる馬の1頭に過ぎないのか。
多くの競馬ファンの目が注がれていた。
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ゲートが開いた。
ディープインパクトは若干の出遅れから、最後方のポジショニングとなる。
先頭が1000m通過59.3秒のハイペースで飛ばす。
かなりの縦長の展開になった。
後方にいるディープインパクトからすると、好ましくない。
3コーナーを迎えて、1頭交わすも、4コーナーを迎えても後ろから2番手。
2番手のケイアイヘネシーはかなり楽な手応えで抜け出し掛かっている。
京都競馬場では、このような展開で、前の馬が残ることが非常に多い。
それを知るファンは、これは届かない!
そう思った人が少なくなかった。
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しかし、である。
直線を迎えた瞬間、その思いは、届く!
にすぐさま変わった。
いや、正確には、届くどころの話ではなかった。
1頭だけベルトコンベアーに乗ったかの様な早さで、先頭に立ったかと思うと、
あっという間に後続が見えなくなっていった。
タイムは2:00.8秒。
若駒ステークス史上、最速のタイムであった。
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そして、武豊はレース後こう言った。
「文句のつけようがありません。」
「皆さん以上に、僕が楽しみです。」
武豊が、ファンが、この馬の未来を確信していた。